環境質管理

分子レベルから流域レベルでの環境質管理研究

人間活動などに伴う汚染物質(人為起源汚染物質)や自然由来で汚濁を引き起こす物質(自然汚濁物)の発生機構、それらの環境中での蓄積・輸送・変換機構、生態系内での移行・濃縮機構および生物や環境へのそれらの影響についての研究を推進しています。同時に汚染物質による汚染防止に必要な技術や政策論についての研究も実施しています。とりわけ、琵琶湖岸にある研究室(流域圏総合環境質研究センター)の特性を生かし、琵琶湖やその流域での汚染に係わる研究を精力的に展開しています。

教員

松田 知成 ( Tomonari MATSUDA)

松田写真.jpeg教授(工学研究科)

研究テーマ

  • 抗原に依存しない抗体スクリーニング技術を用いた感染症対策

  • 環境汚染物質による発癌の分子疫学研究

  • 環境汚染物質の健康影響の機構解明に関する研究

  • 環境汚染物質の健康影響の低減をめざす環境医工学的研究

(専門分野:環境毒性学、分子疫学)

連絡先

桂キャンパス C1棟 3階365号室
TEL: 075-383-3342
E-mail: matsuda.tomonari.8z@kyoto-u.ac.jp

浅田 安廣 (Yasuhiro ASADA) 

HP写真_浅田.jpeg准教授(工学研究科)

研究テーマ

環境省が公表している「気候変動影響評価報告書」に記述されているように、気候変動が深刻化するにつれて、藻類の異常増殖、水害や渇水の発生頻度の増加など、水環境、水資源分野に多大な影響を及ぼしています。その中で、藻類の異常増殖は毒性物質や異臭味原因物質の産生、水処理への影響など世界中で様々な問題を引き起こしており、解決策の探索が続いています。そこで、学術的に藻類について深く知り、工学的に対応策を考える、このような基礎から応用までの幅広い研究に取り組んでいます 

連絡先

流域圏総合環境質研究センター 
TEL: 077-527-6221 
FAX: 077-527-9869 

E-mail: asada.yasuhiro.4z@kyoto-u.ac.jp
https://www.eqc.kyoto-u.ac.jp/management/member/Asada.html 

竹内 悠 ( Haruka TAKEUCHI )

助教(工学研究科)

研究テーマ

「下水の再利用」への関心が高まりにつれ、下水再生水中の化学物質によるリスク管理がますます重要となっています。水中の様々な汚染物質を除去できる膜処理技術に着目し、膜処理過程における微量化学物質の除去機構の解明や効率的な下水再生処理プロセスの開発に取り組んでいます。

連絡先

流域圏総合環境質研究センター
TEL: 077-527-6223
FAX: 077-524-9869
Email: takeuchi.haruka.6m@kyoto-u.ac.jp
https://www.eqc.kyoto-u.ac.jp/prediction/member/Takeuchi.html

研究テーマ・開発紹介

統合的湖沼流域管理のための水文・水質シミュレーションモデルの開発と地域との協働

流域における様々な情報をGIS(地理情報システム)上で整理し、複数のシナリオにおける流域環境の将来における違いを量と質の両面から予測(シミュレーション)し、次にこの結果を関連団体や流域住民に提示して情報を共有した上で、最終的により良い流域システムの構築を目指そうとする研究です。シナリオに基づく流域環境の将来予測から得られる成果は、現行の"Government"パラダイムの行政システムにおいても有効な流域管理方策を誘導するものです。一方、関連団体や流域住民とのコミュニケーション・協働から得られる実施経過をも含めた成果は、流域を対象としたボトムアップ方式の"Governance"の仕組みづくりのために有用な情報や経験を提供することになります。この研究から得られる成果は、最終的には地域社会・地域経済と流域の人間活動やエコシステムを有機的に繋ぐ「持続可能な統合的流域管理」に通じると考えられます。更には、この「持続可能な統合的流域管理」を通じて、より良い行政システムが誘導され、構築されることにも繋がると考えられます。

image_1.gif
図-1 琵琶湖・淀川流域の鳥瞰図

水環境中天然有機物群の特性解析とその影響解明

水環境中において微量汚染物質のキャリアーとなり、それらの蓄積性や毒性を抑制する機能を有する天然溶存有機物質(NOM:Natural Organic Matter)を抽出・分画(例えば、疎水性酸・塩基、親水性酸・塩基、コロイド成分、多糖類等)し、各分画に対してLC/MS/MS、NMR、FTIR等の高度機器分析を実施し、これらの結果を基に、水環境中に存在するNOM成分の起源、分解、生産等を考慮した上で、各NOM分画を代表する有機化合物群の化学構造を同定する研究です。近年、湖沼(特に琵琶湖)では、流域における下水処理の普及によりBODは減少している。しかしCODは漸増傾向にあります。この研究により同定されるNOM分画および化学物質群は、これらの現象の原因を解明することにも繋がると考えられます。また、水環境中のみならず、上水処理、下水処理等におけるNOMの普遍的な機能や影響を解明することにも利用することが可能であると考えられます。

image_2.gif
図-2 フミン質による微量汚染物質の細胞膜透過性の制御の図

DNAアダクトームによる未知DNA損傷の構造決定とその生物影響評価

DNA損傷は、発がんや老化の原因であると考えられています。これらは、外来の紫外線、放射線、発癌物質などによって引き起こされるだけでなく、体内で生じる活性酸素、活性窒素、過酸化脂質などによっても生じます。我々の研究グループでは、HPLC四重極タンデム質量分析器(LC/MS/MS)を用いることにより、様々なDNA損傷を高感度(一億塩基あたり一個のレベル)に定量できることを示してきました。また、未知のDNA付加体を網羅的に解析するDNAアダクトーム解析法を確立しました。これらの研究の結果、生体内には未知のDNA損傷が多数存在していることが明らかとなりつつあります。DNAアダクトーム解析によって生体内で普遍的に検出されるDNA付加体について、その化学構造を明らかにし、その突然変異誘発能及びDNA修復メカニズムについても明らかにする予定です。

環境汚染バイオマーカーの探索と新規環境汚染物質の単離同定

環境汚染のバイオマーカーを開発するため、環境汚染物質曝露の有無で変動する生体低分子やタンパク質を、メタボロームやプロテオームの手法を用いて単離同定します。この研究では、四重極‐飛行時間型質量分析器(LC/Q-TOF/MS)を用いてデータをとり、強力なソフトウエアを用いて、何千ものピークの中から、バイオマーカー候補を抽出します。同定された生体低分子やタンパク質は、曝露マーカーや影響マーカーとして、環境汚染やその生物影響の評価に使用することができ、さらに、化学物質による毒性メカニズムの解明にも寄与します。一方、未知の環境汚染物質をバイオアッセイとHPLCによる分離を組み合わせた手法で単離同定する研究も精力的に行っています。

研究室ウェブサイト