都市衛生工学
都市の高度な発達は利便性を増大させますが、同時にさまざまな潜在的危険性(リスク)を生じる結果となります。当研究室では、都市のもつ諸機能の内、水供給問題を中心にとりあげ、その安全性や安定性の確保法について追求しています。
安全性確保においては、特に環境ヘルスリスクの制御を重視しています。研究手法としては実験的研究と計画的研究があり、その双方を推進しています。実験的研究では、環境ホルモンや発がん物質などの微量汚染物質問題に対応するため飲料水の安全性評価に関する研究、高度水処理技術を中心とする水の浄化システムの開発研究などをおこなっています。計画的研究では、量的・質的問題の双方を対象とした水源の広域管理計画の研究、水消費者の心理分析に基づく環境計画への市民の視点の組み込み手法の研究などに取り組んでいます。
教員
伊藤 禎彦 ( Sadahiko ITOH )
教授(工学研究科)
研究テーマ
人々の健康や生命はさまざまな環境上の問題によって脅かされますが、これを技術によって保護していくことを目標としています。この観点から、飲み水としての安全性の評価と制御に関する研究、人口減少を見据えて需要変動に対応できる上水道システムの構築手法、水道料金の値上げに関する市民とのコミュニケーション手法に関する研究などに取り組んでいます。
連絡先
桂キャンパス CクラスターC1-2号棟 231号室
TEL: 075-383-3254
FAX: 075-383-3256
E-mail: itoh.sadahiko.4ukyoto-u.ac.jp
中西 智宏 ( Tomohiro NAKANISHI )
助教(工学研究科)
研究テーマ
飲料水の微生物からみた安全性の確保を主な研究テーマとしています。
主な研究課題:
・水源の病原細菌に関する網羅的検出手法の開発
・浄水処理プロセスにおける微生物群集の挙動・処理性の評価
・給配水システムにおける日和見感染菌の再増殖の制御
連絡先
桂キャンパス Cクラスター C1-2号棟 231号室
TEL: 075-383-7502
FAX: 075-383-3256
E-mail: nakanishi.tomohiro.8rkyoto-u.ac.jp
安井 碧 ( Midori YASUI )
助教(工学研究科)
研究テーマ
連絡先
桂キャンパス Cクラスター C1-2号棟 233号室
TEL: 075-383-7503
FAX: 075-383-3256
E-mail: yasui.midori.5fkyoto-u.ac.jp
研究テーマ・開発紹介
小規模水供給システムにおける衛生問題と管理手法の構築
人口減少の進行に伴って、飲料水供給施設(給水人口 100 人以下の施設。水道法の適用範囲外であり、水質基準を遵守する義務もない)などの小規模な水供給施設の重要度が高まっています。住民の手によって地元管理されている小規模施設では浄水処理や消毒が十分でない場合も少なくありません。本研究では、水質に関する限定的な情報の下で、安全な飲料水をいかに確保すればよいか、そのアプローチ方法を提示することを目指します。さらに、原水の種類、浄水処理の方法、消毒方法に照らして、必要な水質測定項目や頻度について検討し、小規模水道に対する現実的な水質管理方法を提示します。
図1. 小規模な水供給施設に典型的な水源
水道システムにおける微生物リスク管理の高度化
水道水の微生物的安全性は塩素消毒によって確保されていますが、決して無菌状態というわけではありません。温暖化・気候変動に伴う原水水質の変化、水道管の老朽化、水需要減少といった状況は、水道システムの微生物にとって好適な環境につながり、特に病原微生物の発生には留意しなければなりません。当研究室では、水源から浄水場、給配水過程に至るまでの水道システム全体での微生物的安全性・安定性に関する研究を行っています。
具体的には、最新の遺伝子解析技術を用いて浄水処理過程での微生物群集を明らかにしたり、水源での病原細菌を一斉検出する手法の開発を行っています。また、高度浄水処理プロセスにおける生物活性炭からの生物漏出、給水管内でのレジオネラ属菌の再増殖制御に関する研究などを行っており、水源や浄水場での現地採水調査や実験室内でのリアクター試験等を実施しています。図2. 給水管内部の環境を模擬できるリアクター
消毒副生成物前駆体の同定とその迅速検知
浄水処理過程において、化学物質は有害な消毒副生成物(例:ハロ酢酸)やカルキ臭の原因物質に変換されることがあります。本研究では分画技術や精密質量分析を駆使し、溶存有機物のうち特に藻類に由来するハロ酢酸前駆体の物性や化学構造を明らかにします。さらに水源〜浄水処理プロセスでの挙動を把握するために、実験室スケールで浄水単位処理による除去性を把握しています。
なお、本研究は京都大学大学院 地球環境学堂 環境調和型産業論分野との共同研究体制で行っています。
図3. ラフィド藻類を培養している様子